田中実さんを悼む

俳優・田中実さんには、2009年拙作ラジオドラマ「しづ子~魂の俳句」に出演していただいた。

初対面のご挨拶をしたけれど、田中さんが主演した「凛々と」の演出家が拙作「ええにょぼ」のチーフディレクターだったので、
その人の名前を肴にして、本読みの前、少し談笑した。
その間、田中さんは軽くストレッチをしていらした。
「無名塾の人らしいな……」
という印象だった。
若村麻由美さんも藤本喜久子さんも、真摯な俳優さんだ。田中さんにも同じ匂いがした。

田中さんが演じた古屋という役は、鈴木しづ子を俳句の同好会に誘う、いわば恩人。
しかし、しづ子が俳句にのめり込んでいく過程で、変容していく。
いわゆる「好人物」が、自分では手に負えない「人間の狂気」の前で慌ててしまい、相手を攻撃することしかできなくなる、そんな役だ。
大きな役ではなかったけれど、難しい役ではなかったか、と思う。

しかし田中さんは、その好人物の偏狭さを深いニュアンスで演じていた。
彼をキャスティングした演出家を見直したほどである。

それまでは、他の多くの人と同様、さわやかな俳優さん、というイメージしかなかった。
でもあのラジオドラマの本読み以来、そのイメージは塗り替えられた。

44歳。
これから、いろんな役を演じられただろうに。
私が受けた感銘を、ちゃんと伝えるべきではなかったか……大仰とは思いながら、そんな気がしてしまう。

人はどうして、死に追い立てられるのだろう。
人生のうち、数時間しか接点のなかった田中さんの訃報に際して、胸がつぶれるような痛みを感じる。

ご冥福をお祈りします。

田中実さんを悼む” への1件のフィードバック

  1. 44歳・・・
    田中実さん、私は残念ながら知りませんが、知り合った東さんはさぞかし無念でしょうね。

    44歳 若いですね・・。
    ご冥福をお祈りいたします。

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