特派員便り北海道編④東走・北上1300キロ・出張帰りにひとっ走り

 


<網走にて・・・の巻>


網走は、紋別などと並ぶ、オホーツク沿岸の一地方都市ですが、
そこが「最果ての地」といった気分をただよわせるのは、
網走刑務所にシンボライズされる、人の世、人生の最果てというイメージが重なるからではないでしょうか。


今回、北海道の東のほうへ行ってみよう、と思い立った時にも、最初から網走行きが念頭にありました。
何か強く惹き付けるものが、網走にあるのです。


網走で最初に向かったのは、「博物館 網走監獄」でした。




ここは、明治から昭和40年代まで、実際に使われてきた網走刑務所の建物を移設したもの。最も古いのは100年以上前の建物とのことです。


もらってきたパンフレットから建物名を抜き出してみると、


・囚人を収容していた「舎房」
・懲罰用の「独居房」
・監視所である「高見張り」
・浴場
・味噌蔵
・醤油蔵
・漬物庫
・庁舎
・職員官舎
・裁判所
・休泊所
・農場
・教誨堂
・行刑資料館(これは展示用に作られた建物)


などが、東京ドーム3.5個分という広大な敷地に点在しています。


なお、ここを「博物館 網走刑務所」といわず「博物館 網走監獄」としているのは、近くに本物の網走刑務所があるので、それと区別するためのようです。


 



網走監獄を歩き始めて気づくのが、かつての網走刑務所の様子を具体的にリアルに紹介しようという、博物館側の意欲と配慮です。


例えば、裁判所では、法廷や面会、出廷待ちなどの模様・様子を、等身大の人形を配置して再現しているんですが、これが非常にリアルです。
目にした瞬間に、ドキッとします。
アメリカのポップアートのハイパーリアリズムのよう、とも言えなくもありませんが、本当に使われていた施設に、人間そっくりの人形が置かれると、平穏な気分を破って迫ってくるものがあります。


法廷風景と浴場の再現をデジカメに収めました。












ここに来て知ったのは、網走刑務所が、明治期に大量に発生した政治犯と凶悪犯を収容するための施設(囚人数があまりに多く、本州ほかの既設刑務所では収容しきれなかった)として作られたということと、と同時に、その囚人たちを北海道開拓の働き手として使役するための拠点としての役割も担っていた、ということでした。


行刑資料館に、囚人たちが切り拓いた場所が、地図上に青く塗られて展示されていますが、北海道の真ん中を縦貫する道路や鉄路、網走の街の大半、漁港、網走を囲う広大な農地が、青く光っていました。


 



数ある建物のうち、特派員がもっとも気持ちを動かされたのは、「五翼放射状平屋舎房」でした。
ちょうど、手を大きく開いたような形の建物で、5つの指がそれぞれの獄舎、手のひらの部分に、5つの獄舎をすべて監視できる「中央見張り台」があるという構成です。
まさにパノプティコンで、東京に戻って調べたところ、明治時代の刑務所はフランスのそれをお手本にしたとありますから、フーコーの語ったことは網走に実物がある、とも言えそうです。
明治45年から昭和59年まで実際に使われていたとあります。


五翼放射状平屋舎房の各”牢屋”には、今は囚人はいません。
しかし、そのそれぞれの空間は、囚人たちの呼吸や視線を意識させずにはおきません。
細かな傷のついた太い角材の柱、食事を出し入れするための小穴、高い窓の鉄格子・・・。
囚人たちの声や嘆息や笑いや涙さえも聞こえてくるような感じです。
しばし、息をのみ、立ち止まってしまいます。


 











五翼放射状平屋舎房には、ハイパーリアリズムの人形はありません。昔のままの建物と空間があるばかりです。


それを思い返すと、唐突ですが、やっぱり人形のリアリズムはいらないな、というのが感想です。
人形のリアリズムは、物事の形態や様子を雄弁に明快に説明しますが、その勢いで、何かを吹っ飛ばしてしまうような気がします。




「博物館 網走監獄」を出て、次に向かったのは、網走から少し離れたオホーツクの海岸です。
日はすでにかなり傾いていましたが、雲ひとつない青空の下に、穏やかな海が広がっていました。



【終わり】


<デスクより>

 写真をちらっと見たときに、「あ、銭湯の写真まで!」と思ってしまいました。
 柄付きの背中の人に、怒られなかったのかな?なんて。
 まさにハイパーリアリズム。
 佐渡の金山にも、この手の人形があります。専門の人形師がいそうですね。

 網走……わたしも行ってみたくなりました。
 特派員さん、どうもお疲れさま、そしてありがとうございました。
 またよろしくね。



 


 


 

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