経堂の丈ちゃん②

 

 

「丈ちゃんに精米してもらう」

 

                

 

経堂の「金澤屋米店」が丈ちゃんのお店である。
店内の片側に30キロ入りの米袋が積んである。
「うちは、新潟が多いね。魚沼、上越。あきたこまちや福島米もあるよ。このスペースだからたくさんの種類はとれない。売れるのは決まってるしね。魚沼産ってだけで、ちょっと値があがる。ほら、洋服でいうところの、ブランド品よ。獲れる土地によって当たりはずれはあるよね。産地直送してもらえばいいけど、トラック一杯分頼まないといけないし」
お店の片側には、壁一面に精米機が置いてある。

 

これは精米機のごく一部                        
「でっかいのねえ。これ全部でいくらぐらい?」
「700万ぐらいかなあ」
「ひっえええ!」
「もう15年ぐらい使ってる。精米は、問屋でもやってるけど、それじゃつまんねえからよぉ、うちはみんな玄米でとってる。ハク(白米)は入れてないの」
精米機には、ぬかを出すところ、小米を出すところ、小石などをはじく選別機などが順番に並んでいる……ようである。
実際、素人がみたんじゃよくわからない。
丈ちゃんの店では、小米は近所の雀たちのごはんで、丈ちゃんは子供の頃から、雀のエサやり係だったのだという。しかし、最近では雀も少なくなった。
「ぬかもねえ、昔は近所の人に分けてたけど、うちでぬか漬けする人も少なくなったから。今はみんな、ぬか屋さんに持ってってもらう」
丈ちゃんは、精米機をながめながら、つくづくと言う。
「これが壊れると困っちゃうんだよなあ。(修理に)来るだけで五千円かかっだろ。直して何万円」
維持するのも大変なのだ。
他のお米屋さんでは、もう新しい精米機は入れないというところが多いという。丈ちゃんはきっと、この精米機を大事に大事に使っていきたいのだろう。
私は、お米はもっぱらスーパーマーケットで買っている。確実に十年以上はお米屋さんに行っていない。一人暮らしだから一回に買うのは2キロ。お米屋さんに行って買うのもどうも、という気分になる。
「それがよ、うちに、20代の若い男の子が買いに来るんだよ。『おじさーん』って入ってきてよ」
彼が買うのも2キロ。
「かわいいじゃない」
「そうなんだよ。この間缶ビール半ダース『飲むかい?』ってあげたら、喜んでたよ」
うーんもお、丈ちゃん、人がいいんだからぁ。
私も、若い男の子のマネをして、お米を買うことにする。
1キロ740円の魚沼産、新米2キロ。

 

丈ちゃんは、手際よく仕事をしながら、その前の晩の「丈ちゃんとその飲み仲間たち」を語ってくれる。
経堂には最近、沖縄三姉妹の店ができたのだそうだ。
丈ちゃんとその仲間たちは、他と合流するまでの小一時間、「ちょっと寄ってく?」と沖縄三姉妹の店に立ち寄り、泡盛のボトルを入れた。
「男って、ほんと、バカだからよ」
と丈ちゃん、笑って言う。
私は、目鼻立ちのはっきりした色黒の三人娘を想像した。
「どれが、長女で次女で三女か、区別がつくの?」
「そりゃ、わかるさ」
わかるまで通ってるってことだな。
「いらっしゃいませ!」
と沖縄三姉妹が一斉に微笑む。
「ボトル、入れたらいっさー」
と言ったかどうかは知らない(つづく)。

プラッシー、今でもあります。120円也。

 

 

 

 

経堂の丈ちゃん②” への5件のフィードバック

  1. 冷凍一口メモ。
    土鍋でご飯、いいですね!
    わたしは、ここ数年、フランス製(強調すんな)の三層ステンレス鍋で炊いてます。
    うん、一合でもおいしいです。それに早い。
    一人暮らしだと、小分けして冷凍するでしょ。
    そのとき、ちょろっと、お酒を垂らすとよい、と丈ちゃんに聞き、やってみました。
    解凍後のご飯、つやっつやでふっくらしてます。
    お試しくださいませ~。

  2. Unknown
    私の両親が新潟生まれなこともあり、お米の味には比較的敏感なちえぞうです。

    あーーー、お米の味って、お米によっても、炊き方によっても違いますよね。

    10年ぐらい前に、新潟のスキー場で食べたご飯が忘れられません。そのご飯にはカレーがかかってでてきました。でも、ご飯が「つやって」いて、「ぐっと」くる味があった。2杯目はカレーなしでおかわりし、その味を忘れないようにと、もう1杯おかわりしました。
    あのスキー宿、いったいどこにあったんだろうなー。

    そんな私も一人暮らしのため、お米は2キロずつ購入。以前住んでいた浦安ではお米やさんが隣だったので、そこで銘柄を選んで、精米してもらってた。
    なので、「経堂の丈ちゃん」のお話を、そのときのお米屋さんの雰囲気を思い出しながら読んでます。

    ごはん、小さい電子ジャーで炊くとまずいので、いまはもっぱら土鍋。15分ぐらいで炊けて、一合でもおいしく炊けます・・・・。

    って、最近はパンばっかりですが・・・。

    丈ちゃんの話、読んでたら、おいしいご飯、食べたくなっちゃったなぁー。

  3. おいしかった。
    chiekoさんのコメント、丈ちゃんが読んだら喜ぶだろうなあ。どこかで読んでくれるかな。
    丈ちゃんちで買ったお米、さっそく、炊いていただきました。
    ほんと、ツヤがあっておいしかった。
    うちらも、近くに気安いお米屋さんがあったらいいのにね。

  4. Unknown
    お米のおいしさを知ったのは小学校入学してぐらいかなぁ。
    当時、祖父母が栃木でコシヒカリ作っていて、夏休み、冬休み、春休みと休みになると、弟と2人で、田んぼと畑しかない田舎に、休みの期間中ずーっと遊びにいってました。

    今でも思い出します。おいしいご飯(お米)って、ツヤ、香りが違うんですよ。子供ながらにして知ってしまって、味噌汁とご飯だけで食が進むんです。

    今はスーパーで売っているお米を食べてますが、炊き立てでもツヤが無い。
    時々、親戚が玄米を送ってくれる。それを実家に帰った時、母とコイン精米所まで行って精米して食べることが時々ある。
    日本って、すごいよねぇ。こんなにおいしいお米が食べれるんだもん!っていつも思います。

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